ただし、家族信託をして信託財産の管理や運用をしていく中で節税対策になる場合もあります。
目次
委託者=受益者だと贈与税はかからない
委託者と受益者が同一人物であれば、信託財産を管理するのが受託者になっても贈与税はかかりません。
受託者は信託財産の権限を持っているだけで、形式的な所有者だからです。
ただし、委託者と受益者が違うと贈与税がかかります。
※家族信託は基本的に委託者と受益者が同一になります。
このように父が委託者兼受益者であるケースを想定してください。
父の持っているアパートを信託して、受託者の長男が信託財産であるアパートの所有者となり管理や運用、処分をします。
しかし、収益が出てもそれは長男のものではなく受益者である父のものです。
長男は信託財産を管理する権限を持っていますが、形式的な所有者であって贈与されたわけではありません。
長男は父が持っていたアパートの管理をしているだけで、その収益は父が得るので贈与税はかからないのです。
解説していきましょう。
相続税がかかる場合
・受益者が死亡しても家族信託は終了せず第二受益者に受益権が移ると・・・
⇒相続税がかかる
・受益者が死亡して家族信託は終了。残っている信託財産を相続人が承継すると・・・
⇒相続税がかかる
贈与税がかかる場合
・受益者は亡くなっていないのに第二受益者に受益権が移ると・・・
⇒贈与税がかかる
・受益者は亡くなっていないのに家族信託が終了。残っている信託財産を信託契約で設定した帰属者が承継すると・・・
⇒贈与税がかかる
信託財産に不動産がある場合にかかる税金
家族信託で不動産を登記した場合
委託者から受託者に所有権移転登記の手続きをします。
この登記申請をするときに≪登録免許税がかかります≫
信託した不動産評価額の0.4%(評価額が1000万円だと4万円)の登録免許税を納めなければいけません(土地は0.3%なので評価額が1000万円だと3万円になります)。
生前贈与による登録免許税は、不動産評価額の2%です。
評価額が1000万円だと20万円になるので、家族信託をした方が安くなります。
受託者を変更する場合
家族信託が継続しているのに受託者の変更(死亡や辞任)があると、
受託者から第二受託者に所有権移転登記をします。
この場合、≪登録免許税はかかりません。≫
受益者を変更する場合
受益者(委託者)が亡くなっても家族信託を終了させず第二受益者に受益権を承継すると、
受益者から第二受益者に変更登記をする必要があります。
この変更登記をするときに≪登録免許税がかかります≫
登録免許税は不動産一つにつき千円になります。
相続登記による登録免許税は、不動産評価額の0.4%になります。
評価額が1000万円だと4万円なので、
家族信託を組み受益権として相続させた方が安くなります。
家族信託を終了する場合
家族信託が終了したら、信託財産である不動産を受託者から帰属権利者(残った信託財産を受け取る人)に所有権移転登記をします。
この変更登記をするときに≪登録免許税がかかります≫
登録免許税は不動産評価額の2%で、さらに信託登記抹消分として不動産一つにつき千円がかかります。
ただし、所有権移転の登録免許税である2%が0.4%になる場合があります。
家族信託を開始してから変わることなく委託者=受益者で、その委託者=受益者が死亡して家族信託が終了。残った信託財産を得るのが委託者の相続人だと登録免許税は不動産評価額の0.4%になります。そこに、信託登記抹消分として不動産一つにつき千円がかかります。
固定資産税は受益者が負担する
※信託不動産を持っていない人は関係ありません。
家族信託を開始した次年度に、信託された不動産の登記上の所有者である受託者に固定資産税の納税通知書が送付されます。
それを信託財産から受託者が支払うことになります。
受託者は受益者のために財産管理をしているだけなので、実際に固定資産税を負担するのは受益者です。
所得税と不動産取得税
※信託不動産を持っていない人は関係ありません。
信託財産から収益があると、受益者に所得税が発生します。
受託者が財産の運用をしていても、実際にその利益を得るのは受益者だからです。
不動産取得税は登記簿上の形式的な所有権移転に過ぎないのでかかりません。
不動産取得税・・・不動産を取得したときにかかる税金。毎年払わなければいけない固定資産税に対し不動産取得税は不動産を取得したとき一度だけ払う税金。
・委託者=受益者であれば贈与税はかからない。※家族信託は基本的に委託者と受益者が同一です。
・受益権を承継すると相続税がかかる。
・受益者が亡くなっていないのに受益権を承継すると贈与税がかかる。
・不動産を信託財産に入れる場合、登録免許税がかかる。
・生前贈与よりも家族信託をした方が税金が安くなる場合がある。
・固定資産税納税通知書が受託者のもとに届き、受託者に支払い義務があるが、実質的に負担をするのは受益者。