家族信託

家族信託と遺言の違いとは?

家族信託をすれば遺言書はいらないですか?
司法書士
司法書士
家族信託は遺言と同じ機能を持たせることが可能です。
しかし、信託財産のみに適用されるので、信託していない財産を相続させたい場合は遺言が必要になります。
家族信託と遺言の違いは何ですか?
司法書士
司法書士
違いは大きく二つあります。
一つ目は、自分の次に相続させたい人しか指定できない遺言に対し、家族信託は何代にも渡って承継者を指定できることです。
これが家族信託と遺言の大きな違いになります。
二つ目は、書き換えを勝手にできるかできないかです。
遺言書は勝手に書き換えができますが、家族信託は委託者だけで勝手に契約を変えることはできません。

◎家族信託と遺言の大きな違い

遺言は自分の次に財産を相続させる人しか決めることができません。
仮に遺言書にそう記しても効力はありません。

▼妻の次は甥に財産を相続させたいと遺言書を作成したが、妻には相続できてもその次の甥には相続できない。

最終的に自身の財産を甥に相続させたい思いは遺言では実現できません。


しかし、家族信託だとそれが可能になります。

例えば委託者兼受益者が死亡した後も家族信託は終了させず、第二受益者・第三受益者を契約で決めておくことができます。この方法を利用すると何代にも渡って承継者を指定することが可能になります。

▼家族信託なら、契約で設定すると承継ができる。

画像のように、「①第二受益者を妻、②第三受益者を甥」という信託契約の設定をしておくと、信託財産を委託者から妻へ、妻から甥へと承継させることが可能です。

委託者が亡くなったあとも信託を終了させず、受益者を何代にも渡って指定することにより
遺言では不可能だった、自身の思うような財産の残し方が実現できます。

ただし、家族信託を遺言の代わりに使えるのは信託した財産のみです。

信託していない財産を誰かに相続させたい場合は遺言が必要となってきます。

画像のように委託者の財産3000万円のうち、1000万円を信託財産に設定した場合、信託していない2000万円を相続させたいのであれば、遺言書を作成しなければいけません。

司法書士
司法書士
このように全財産を信託するケースは基本的にはありません。委託者が一部の財産を管理していることがほとんどなので、その財産を相続させたい場合は遺言を残す必要があります。
家族信託と遺言は併用ができるということですね!
でも、もし仮に家族信託をする前に遺言を残していたらどちらが優先されるのですか?
司法書士
司法書士
先に遺言を作成していても家族信託が優先されます。

◎家族信託>遺言

遺言書を先に作成していても、家族信託を結んだあとに作成したとしても優先されるのは家族信託です。
ただし、先ほども述べたように家族信託はあくまで信託財産のみが対象となります。信託していない財産について遺言を残していた場合、遺言の効力は発生します。

例:遺言に「自身の死後、財産Aは長男に相続させる」と残したあと家族信託を締結。

・パターン1

信託財産に財産Aを入れ、「委託者の死後、財産Aは長女に渡す」ことを契約で設定。
先に遺言を作成していても、家族信託が優先されるので財産Aは長女が手にします。

・パターン2

信託財産に財産Aは入れず、委託者が管理。
信託していない財産なので遺言に残した通り、財産Aは長男が手にします。

◎何度でも書き換えができる遺言はトラブルの原因に?

遺言は一人で勝手に書き換えができます。
仮に公正証書遺言を先に残していたとしても、
それよりも日付が新しい遺言書があるとそちらが優先されます。

しかし、家族信託は委託者一人の権限で契約を勝手に変更することはできません。
本人が元気なうちに契約内容を決めるのでトラブルを防ぐこともできます。

仮に家族信託の途中で契約を変更する場合は、委託者と受託者が話し合いをした上での変更となります。

一人で勝手に書き換えができてしまう遺言に対し、
家族信託では委託者と受託者の二人で契約を変更するので、
遺言の代用として契約を交わしていても、内容を勝手に変えるということはできないため、
家族間のトラブルを防ぐことができます。

・家族信託は遺言と同じ機能を持たせることが可能。
・ただし、信託財産のみ適用されるため信託をしていない財産については効力がない。
・信託していない財産を相続させたい場合は遺言が必要。
・遺言を先に作成していたとしても家族信託が優先される。
・家族信託を結んだあとに遺言を書いても家族信託が優先される。